世界につながる橋渡し

 

 横須賀市長沢にあるDayzかしこに伺いました。管理者の門原美智子さんが事前にメールで送ってくださった道案内を頼りに駅から歩いていくと、突然目の前に海が現れました。

海に面した建物の2階にあるDayzかしこからは、海が見渡せます。

 

 Dayzかしこの母体である有限会社かしこは、医療難民に課題を感じて、高齢者に向けて医療的ケアやターミナルケアに対応できる住宅型有料老人ホームなどを運営しています。設立当時は、そのようなケアを実施している施設は三浦市で唯一、横須賀市では2番目だったそうです。その専門性を活かして、医療的ケアを必要とする子どものための放課後デイサービスを展開し、さらに2017年に成人の方の通所施設であるDayzかしこが開設されました。

 

 「高齢者施設の設立時もそうだったが、制度の壁を感じる」と門原さんは話します。例えば、医療的ケアがある方が利用できる移動支援サービスあまりないため、当初は予定していなかった送迎を、Dayzかしこが行うことになったそうです。

「負担を考えると家族に送迎をお願いすることはしたくない。家族が1日中つきっきりになってしまうことには、違和感がある。」と、家族と本人がそれぞれの生活を送ることができるべきだと主張しました。

◇Dayzかしこパンフレットより
◇Dayzかしこパンフレットより

 

 ようやく開所から1年を迎えようとするDayzかしこでは、門原さん自身が大学で美術を学んだこともあり、ゆくゆくは芸術活動を取り入れていきたいと考えています。

「芸術は万人が享受できるものであり、みんなが楽しめるものであるはず。」

「芸術を通して、外国の楽器に触れるなど世界の文化とかかわったり、他人とのかかわったりするきっかけになれば。」と、芸術によってその人の世界が広がることへの期待を話してくださいました。さらに、「芸術というと苦手意識がある人も多いが、それは“上手・下手”といった評価を受けた経験があるからだと思う。また、実際に体験してみて、好き・嫌いが増えることで人生の選択肢が広がるとよい。」と、続けます。苦手なことも、違うアプローチをしてみたら好きになるかもしれない。自分の苦手なことを知ることで、翻って自分の好きなことがわかるかもしれない。障害の有無にかかわらず、人生をたのしむ秘訣であるように感じました。

 

 まずは「みなさんが外に出かけるというよりも、施設に来てもらいたい。」と、知り合いのアーティストを招くことからはじめたいと考えているそうです。遠くに出かけることが難しいとしても、ふれあえる距離から広い世界につながっていく。門原さんのお話からは、その橋渡しを芸術ができるのではないか、というわくわくする気持ちが伝わってきました。

 

 (川村 2018.6.28訪問)