小さな創作物から

横浜市磯子区の磯子区障害者地域活動ホームに伺いました。ちょうどクリスマス前の繁忙期が終わった利用者のみなさんが、休憩スペースで思い思いに過ごしています。

 

 室内には、大小さまざまな、吊り下げ式のおえかき帳が。そこには利用者の皆さんが描いたイラストが残っています。

「STスポットで行われた、第1回目(ゲスト:鈴木励滋さん)の勉強会に参加して、皆さんの自由な表現を見たいと思い作りました。鈴木さんがおっしゃっていた『ザツゼン』という言葉が心に残っています」と語るのは、担当職員の渡辺宗吾さん。

 

渡辺さんは、元々オーダーメイドの車いすを作る仕事をしていたといいます。障害のある方と、より密接な関わりを持ちたいと思い、磯子区障害者地域活動ホームで働くことになったそうです。

 

 鈴木さんの話を聞いた渡辺さんは、早速おえかき帳を設置してみたそうです。施設で余った紙を、いくつかのサイズに揃え紙の束にしました。利用者の皆さんは仕事の合間に、たくさんのペンを使い、自由に絵を描いています。付近の壁には、そのなかから選りすぐりの作品を展示しました。

 

 このほか、磯子区障害者地域活動ホームでは、使用済みの切手を集めています。トレイに好きな切手を貼り合わせたり、乾くと木のようになるねんどに切手を貼って、マグネットを作成してみたり。ひとつのことに集中して作業をするのが得意な人も多く、きれいな切手をどう再活用できるか、日々試行錯誤。そういった小さな創作物からも、どことなく利用者さんの性格が垣間見えます。

 

やがて室内では、皆で旅行に行った時のビデオを鑑賞する会がはじまりました。6年前の映像だそうで、懐かしい人たちの顔を、利用者の方だけでなく、スタッフやボランティアの方々も柔和な笑顔で見つめています。

 

 利用者の皆さんや、施設職員にとって、この場所は職場というだけでなく、たくさんの思い出が詰まったところでもあるのだなと感じました。おえかき帳には、そうした利用者の皆さんの生きた軌跡が、絵の形で残っています。


(2017/12/22訪問 加納)