想像力を働かせて

横浜市保土ケ谷区にアディクション(依存症) も含めた精神の方の自立訓練(生活訓練)を

行う事業所を持つステラポラリスに見学の相談をしたところ、

「月2回音楽ワークショップをしているので、ぜひそちらにいらしてください」とのこと。

ワークショップ会場である横浜駅から少し歩いたところにある、フォーク喫茶『元気です』にお邪魔しました。

 

音楽ワークショップでは、ラテンパーカッション奏者の加藤ちゃぼさんを講師に、

ラテン打楽器や、ステラポラリスのみなさんお手製の楽器をみんなで鳴らします。

私たちもワークショップに参加させていただき、

自分でリズムを作ったり、誰かのリズムをまねたり、音楽に合わせたり、

夢中になって楽器を鳴らしました。

ステラポラリスのみなさんも、

リズムに集中する緊張感と、リズムで遊ぶ自由さを楽しんでいる様子でした。

 

音楽活動のきっかけは、理事長である壁田英一さんが

フォーク喫茶『元気です』の常連客だったことからつながりができ、

4年前から『元気です』の音楽イベントに利用者が参加したり、

共同で小さなホールを借りてライブイベントをしたりするようになったそうです。

2017年4月にも地球市民かながわプラザで『元気です』と合同で音楽イベントを企画し、

『元気です』のお客さんのステージ発表や、当事者の体験談などのプログラムを行いました。

加藤ちゃぼさんとも『元気です』で知り合ったそうです。

 

音楽を通して、障害の有無に関わらず人がつながる場を築いてきた壁田さんですが、

「最近はうつ病など精神病に対する認知度は少しずつ上がってきたが、

当事者や家族が周囲に打ち明けづらいなど、まだまだ偏見や壁があると感じている。」

と話します。

また、「精神障害者は病院の精神科デイケアサービスに通っている方が多いが、

医療制度の枠組みの中では、地域の方と関わるようなプログラムは用意されていないのが実情」

と地域移行の支援に対して課題を感じていることを話してくださいました。

さらに、依存症を抱えた方が地域で暮らすことついて、

「街に出れば、あちこちにアルコールやパチンコ店など依存の対象となるものがある。

対象と距離を置かなければいけないと考えていては、社会生活が送れるようにはならない」

と、依存対象との向き合い方を壁田さんは考えています。

 

病気を抱えながらも生活は続きます。

当事者の“自立”や“生活”のかたちを、想像力を働かせて捉えていることを感じました。

そしてステラポラリスでの音楽活動は、偏見や制度の壁などと関係なく、

「音楽が好き」「たのしい」といったシンプルな気持ちで当事者と地域をつなげているように思いました。

 

 

(2017年5月24日訪問 川村)