横浜市瀬谷区、瀬谷駅から徒歩20分ほどの住宅街の中にある、
せや福祉ホームを訪れました。
入り口には手作り感のある、かわいらしい看板が掲げられています。
この日は月2回開かれている美術教室「アトリエ・メイメイ」の活動があるということで、
担当職員である田中弘正さん案内のもと、見学させていただきました。
玄関に入ると左右に部屋が分かれており、
それぞれあじさい作業所、こもれび作業所として
受注作業や手芸品製作などの作業活動を行っています。
一人ひとりが自分に合った作業を選べることを大切にしているとのことで、
自分で作りたいと見つけてきたものの材料を持ってくる方もいるそうです。
アトリエ・メイメイの活動は、交流室というみんなが行き来できる
ちょっとしたホールのような場所で行われていました。
円形のテーブルを囲んで、5名ほどの利用者さんが絵を描いており、
その側で2名の講師が制作を見守っています。
講師をしている2名のボランティアは、
もともとせや福祉ホームの職員として
立ち上げに関わった当時から美術教室をはじめ、
退職した後はボランティアとして続けているということで、
その活動は20年以上に及びます。
それぞれの利用者さんの作品のこと、これまでの活動のことなど、
丁寧に教えてくださいました。
色鉛筆を使ってスケッチブックに絵を描いていた男性は、
1枚の絵を半年かけて描くそうです。
新聞の切り抜き写真から描きたいモデルを選び、
講師が輪郭を下描きしたものに、色を塗って完成させます。
力の加減や筆跡にその人らしさが表れます。
向かいにいた女性はステンシルという、
型を使った絵を描いていました。
隣に座っているボランティアに絵の具を出してもらい、
色の具合を指示しています。
同じ型でも、濃淡のつけ方や色の作り方で仕上がりが異なり、
同じものはありません。
ステンシルしたものは、巾着やコースターなどの製品になります。
隣の女性は画面いっぱいに水鳥の絵を描いていました。
スケッチブックの最初の方のページの絵から、
画風が少しずつ変わっています。
ボランティアさんが女性に見せた1枚の絵ハガキから
インスピレーションを受けて、「こういう風に描いてみようかな」
と自分で工夫してみたのだとご本人が教えてくださいました。
この日描いていた絵は完成し、タイトルをつけようとなったときに、
ボランティアさんの勧めで、作業をしている部屋にいる人たちに
意見を求めに行っていました。
しばらくすると、どうやら好評だったようで、笑顔で帰ってきました。
「その人の絵を悪く言わないで、理解してくれる職員がいるのがいい」と、
ボランティアさんは話します。
さらに「絵を描くことでコミュニケーションが生まれることが大切。
絵を通して、障害のある方と会話をしていると思っている。」と話した後、
「私たちがいうところの、“会話”だけどね」とさりげなく付け足しました。
その言葉や、作品制作への関わり方から、
決して指導をするわけではなく、一人ひとりが持つイメージを汲み取り、
かたちにするときにそっと必要な手を添えるような
時間が重ねられてきたことを感じました。
せや福祉ホームでのアート活動は、
仕事や余暇といったくくりとはまた違い、
そこに通う利用者さんにとっても職員にとっても、
日常の一部に溶け込んでいるように感じました。
(2017/06/22訪問 川村)
◇せや福祉ホームホームページ http://seyafukushihome.org/dayservice.html