立ち止まって表現を

まどか工房は、横浜市旭区鶴ヶ峰駅周辺に3つの工房を持っており、

それぞれまどか工房Ⅰ・ⅠⅠ・ⅠⅠⅠとして、

主に知的障害を持った方が製菓作業、弁当製造、喫茶・下請け作業に分かれて

仕事に取り組んでいます。

まずはまどか工房Ⅰを訪れました。

 

私たちが到着した時はお昼休みで、皆さんがくつろいでいるなか、

施設長の新倉朋矢さんに、まどか工房Ⅰで行っているクッキー作業について、

実際に厨房の中に入って説明していただきました。

クッキー作りの工程は材料の計量や生地作り、成型など細かに分かれ、

さまざまな得意分野がある利用者さんが取り組みやすいように、

道具にも工夫がされています。

例えば、丸めた生地を鉄板に等間隔に並べられるようにプラスチックの格子を使ったり、

クッキーを入れる袋にラベルを貼るときに同じ位置に貼ることができるように、ガイドが用意されていたり、すべて職員さんの気付きをアイディアで手作りされています。

新倉さんにお話を伺っている間に、

休憩を終えた利用者さんたちが続々と厨房に集まってきました。

毎朝一人ひとりの役割分担を確認しているそうで、それぞれてきぱきと身支度を整え、

持ち場について仕事に取り掛かっていました。

 

しばらくすると、弁当作りをしているまどか工房ⅠⅠⅠの方々が、

まどか工房Ⅰで食べ終えた弁当箱を回収しにやってきました。

私たちも、回収を終えてまどか工房ⅠⅠⅠに戻る皆さんと

ご一緒させていただくことになりました。

ちょうど近所にある小学校の下校時間と重なり、挨拶を交わしながら10分ほど歩きます。

先頭でカートを押す利用者さんはずんずん進みながらも、

時々立ち止まって後ろに続く人たちを待ってくださいました。

到着したまどか工房ⅠⅠⅠでは、弁当箱を洗う作業を行っていました。

毎日受注を受けて弁当を作り、配達・改修を行っているそうです。

そこで支援員として働く浦郷大祐さんは、

「障害のある方がカートを押して歩く姿が、街の風景になればいいな、と思っている」

と話しました。

 

最後に喫茶店と、菓子箱の箱折りなどの受注作業を行っている

まどか工房ⅠⅠにお邪魔しました。

ちょうど納品のタイミングだったようで、

大量の段ボール箱をまどか工房ⅠⅠのみなさん総出で

バケツリレー式にトラックに積み込んでいました。

積み終えると、次の箱折りが開始されます。

その横では、喫茶店のメニューやチラシを手書きで作る作業をしている人もいました。

店内で売られている製品のポップ作りも担当しているそうです。

◇利用者さんにいただいた手書きのちらし
◇利用者さんにいただいた手書きのちらし

そのまま喫茶店でお茶をいただきながら、新倉さんと浦郷さんに改めてお話を伺いました。

まどか工房では、「本人の実力を生かすことが仕事のあり方であると考え、

ひとりひとりの役割を作ることを大切にしている」と新倉さんは話します。

休み時間や、仕事として絵を描いて過ごす方もおり、

昨年は創作が好きな利用者さんの作品を集めて喫茶店に展示スペースを作って作品展を開いたそうです。

現在は仕事との兼ね合いもあり、

「ゆっくり立ち止まって表現に向き合う機会が不足している」と話しながらも、

「利用者さんの表現に触れることで、障害のある方のポジティブなイメージや楽しい一面を

地域の人に知ってもらう機会が作れたら」と、文化芸術活動への期待も感じられました。

思わずクスッと笑ってしまう独特の間を持つウェイターの接客を受けながら、

確かにこの和やかな空気をいろんな人に知ってもらいたい、と思いました。

                                  (2017/5/12訪問 川村)

◆まどか工房ホームページ http://www.k3.dion.ne.jp/~madoca/index.html

喫茶&ショップまどか(まどか工房ⅠⅠ)のちらし
喫茶&ショップまどか(まどか工房ⅠⅠ)のちらし